Interview No.1 ウシュル・エリさん(シルクロードムラト店主)

SEYNAインタビューと題してこれから定期的に、日本でウイグル文化の紹介に力を注がれている方々をご紹介していきたいと思っています。記念すべき1回目はこのホームページをご覧の皆様ならご存知の方も多いと思いますが、埼玉・南与野にあるウイグル料理店「シルクロードムラト」の店主、ウシュル・エリさんです。
 
 
 
すでに多くの雑誌に掲載されている人気店の店主であり、これまでに多くのインタビューもこなしてきていらっしゃいますが、今回改めて私たちの目線でご紹介させていただきたいと思いインタビューを申込みました。
今年ですでに開店して7年が経つお店は、ウイグル文化の香りがあちこちから漂っていました。実際施されている装飾品はどれも現地(カシュガル)から調達したものばかりだそうで、お店はいるだけで外の喧騒を忘れさせてくれる、まるでウイグルの空間そのものです。
 
 
 
カシュガル建築が店のあちこちに
 
 
「日本語を学びたくて来日した頃はこんな人生は全く想像していなかった」と話し始めてくれたエリさん。兄の来日後、留学で日本へ。当初は留学終了後帰国する予定でしたが、帰国を断念し、不景気真っ只中で逆風が吹き荒れる2006年、大学で学んだ経営論を生かそうと、カウンターのみの小さなお店でシルクロードムラトをスタート。人情味あふれるエリさんの個性と本場そのもののウイグル料理が多くのリピーターを呼び、わずか半年後には隣のテナントも借りて、お店を拡張することに。その際なんとテナント間の壁をぶち抜き、ひとつの空間に!拡張部分は落ち着いたテーブル席となっています。私が初めてお店を訪れたのはちょうどその頃でした。その後2008年には「株式会社シルクロードムラト」を設立。NHKの料理番組の他様々なメディアでも取り上げられる人気店へと成長していきました。
 
 
()オープン当初はこのカウンターのみ()拡張したテーブル席部分の壁にはウルムチの景色等が
 
 
「私はどの料理もとっても美味しくて注文する際にいつも迷うんですが、日本人の舌に合うように等、料理に何か工夫はされていますか?」と聞くと、間髪入れずに
「いや、それはしなかった。“ウイグル料理”というものを伝えたいという思いがあるから、だからそこはあえてそのままで勝負してきたよ」と返ってきました。
その言葉を立証するかのように店内にはいつも日本人や海外の方のみならず故郷の味を求めてやって来た在日ウイグル人の方たちの姿も。オープン当初から変わらない光景が今もあります。ムラトが多くの人の支持を集める理由はこうしたエリさんの想いにあるのかもしれません。
 
「1番人気のメニューは?」と聞くと、少し悩んだあと
「それが・・・どれと言えないくらいどの料理も本当にみなさんに愛してもらっているよ」と話してくれました。その言葉通り、お客さんのテーブルにはさまざまなウイグル料理が並んでいて、帰る頃にはみんなきれいに胃袋におさまっています。実際私もお店を訪れる時はいつもメニュー表と格闘しています。もっと大きな胃袋があれば・・・なんて。
長年通ってずっと同じ物を召し上がるお客様や、月によって大人気になるメニューがあったりするそうです。だからメニューを一新するようなことは考えていないとか。今後メニューの追加を計画中されているそうですが、あくまで既存のメニューには手を加えないとのこと。
 
個人的にはムラトに行ったらカワプは是非食べてほしい料理です。私の周りでもムラトのカワプは本当に美味しい!との声を良く耳にします。実際多くの人がカワプは注文するそうで、多いときは1日250本も売れることがあるとか。
このカワプを焼いている機械、最近新たに購入し直したそうでお値段を聞いてビックリな代物でした。あと写真を撮らせていただくのを忘れてしまいましたが、お店にはサモサやナンを焼くのに使うトヌルと呼ばれる窯もありました。
 
そして話も中盤になり、エリさんがお店の奥から、何やら素敵なものを持ってきて見せてくれました。「頑張って取得したんだ」と話す手元で輝いていたのは日中双方の調理師免許証。「写真を撮らせて」とお願いすると快くOKをくれました。美味しい料理を提供したいと追及する姿勢に終わりはまだまだないようです。
 
 
 
(左)美味しいカワプがここから誕生 (右)2か国の調理師免許
  
 
お店の経営について話が進むと
「自分はごく簡単なHPを作成したくらいで、それ以上の宣伝をしてこなかった。というのも自ら積極的に宣伝したり、アピールすることは苦手。でも、自分のすべきことをしっかりとやり遂げていれば自然と流れができ、そこへ集まってくれると信じていた。」
 
「食べにきてくれたお客様が自身のSNSやFBやブログにその日注文した料理を綺麗に掲載して、長いコメントまで付け加えてくれて・・・本当にいつも感謝しています。お店はお客さんが大きくしてくれたと思っている」と真剣な眼差しで語ってくれました。
以前居合わせたお店の近くに住むというお客さんから聞いた話ですが、週に一度しかないお店の定休日にはエリさんたちは地域の清掃活動などにも積極的に顔を出されているとか。ムラトが愛される理由はただ美味しい料理がここにあるからではなく、それをエリさんが作るからなのでしょう。
 
人気店としての地位を確立していく中で新たな挑戦も続けるエリさん。その一つがオリジナルのお酒―タクラマカン―
 
 
 
ウイグル・ホータンに自生する砂漠人参・カンカを輸入し、それを日本の酒造会社でお酒へと変える。ウイグルと日本が見事に融合した一つの形。お店で味わうことも可能だし、気に入れば購入も可能です。
また、輸入を通じて多くの日本人にウイグル文化を紹介すると共に今後は逆に日本のすばらしい所も現地に届けるべく輸出も視野に入れているとか。エリさんの目線で見つけてくれた日本のいいところを、この日私にもいくつか教えてくれました。そこにもこだわりがあり手を加えるところと加えないところがはっきり。伝えたい物には決して手を加えない。私がカンカというものをムラトで初めてを知ったように、現地の方たちにも同じような瞬間が届くんだなぁとお話を聞きながら想像していました。
 
最後に、私が唯一用意していった質問をぶつけてみました。
「“ふるさと”と言われて浮かぶ景色は何ですか?」
その答えはうーん・・・と少し考えた後、心に浮かんだ小麦畑やメロン畑の話を懐かしそうに話して下さいました。幼いころから料理をすることや農業のお手伝いが大好きだったそうで、老後はゆっくり農業をやるのが夢だそうです。
 
エリさん独自の経営論にはお客様や故郷、また第二の故郷である日本に対する深い愛情が基盤あることがひしひしと伝わってくるインタビューでした。ここは都内からは少し離れた場所なのに足が向いてしまうのは私だけではないようで、関東近郊からや関東へ仕事で来た方も、ここを目当てに埼大通りを歩いてしまう、ムラトとはそんなレストランです。ウイグル料理とともにウイグルに出会える場所、ムラトへぜひ足を運んでみて下さい
最後にエリさん、お忙しい中貴重なお時間をありがとうございました!(長居をしてしまい、すみませんでした)
 
 
▲この日は散々迷ってポロとカワプをいただきました
 
 

店舗情報

(2015年11月現在)

シルクロードムラト
http://silkroad-murat.com/
埼玉県さいたま市桜区栄和3-20-13
営業時間17:00-24:00  ラストオーダー 23:00
TEL:048-852-3911
定休日:毎週月曜日 

 ◆追記◆

(左)2010年頃のムラト(看板も以前のものです)  (右)精力的に大学祭などにも出店されています

 

 

 

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